ひとおもい

主にゲームやアニメのレビューをしています。

void tRrLM(); //ボイド・テラリウム (ゲーム編)

2020年ゲームレビュー 3
1,360分=約23時間。エンディングまで。その後は無限廃墟に潜り続けて数えていない。
ミニマムでソリッドな新作終末ローグライク。ゲームとしてはいろいろな意味で初心者向けです。

以下全部ネタバレ。キリングマシーンとなってダンジョンを駆け抜けろ!

nippon1.jp

 

 

1.お気楽カジュアルローグライク

このゲームはローグライクの中でも「カジュアル」であることを追求している。これは決して簡単であるとか救済措置が多いとか言うことを意味しない。実際、敵は数多く配置される上にステータスも高いものが多いので対処法を知らなければすぐにやられてしまう。

従来のローグライク要素のオミット

本作では従来のローグライクにあった様々な要素が意図的に省略されており、簡素でとっつきやすいゲームに仕上がっている。

一番の特徴はデスペナルティがほぼ無いこと。通常のローグライクではダンジョンで倒れるとレベルが1に戻り、装備を含めた全てのアイテムを失ってしまう。ただし大半のゲームにおいて、倒れる前に適切なアイテムを使って装備を持ち帰ることができれば、次の冒険では鍛えた武具でより簡単に冒険を進めることができるようになる。

しかし今作では、ダンジョン内で手に入れたアイテムは拠点に帰る際にトリコの食料・レシピ・素材を除いてすべてテラリウム用の材料に変換される。そのため「倉庫」のような、持ち帰ったアイテムを次の冒険でも再利用する概念は無いし、剣や盾を合成して強くしていく要素もない。初代トルネコでも武具の修正値はあったのに、今作の完全使い切りシステムはいっそ潔い。これらによりデスペナルティと呼べるのは実質的に冒険をやり直す時間のみであり、ローグライクをカジュアルに楽しむことができる。

持ち帰りの巻物は無いが、テラリウムには任意のタイミングで戻ることができる。その手段は自爆。どのみち倒れたらテラリウムに帰ることになるのでロボットらしい合理的な行動といえばそうなのだけど、普通のローグライク感覚だと初見は少しギョッとする。自爆してもテラリウム用の素材やレシピ、シナリオ上の収集物などはしっかり保存されるので、目的のブツを手に入れたら階段まで行かず早々に帰還してかまわない。

その他アイテム関連では未識別のアイテムという概念も店の概念も無い。まあ店とかこの終末世界で誰が開くんだって話だけど。また他のローグライクで言う「矢」に相当するアイテムがない。矢を撃ちたいならアクティブスキルの「ショット」を使おう。

突風や地震に当たる現象も無いが、これはトリコの腹持ちで代替されていて、1つのフロアにずっと留まり続けることはできない。いわゆる「メッセージログ」がおせわっちによるもの以外ほぼ無いのもミニマムを追求した結果と言えるだろう。

自己強化が捗るイケイケなダンジョンライフ

本作では基本的にアイテムが頼りにならない。まず遠距離攻撃手段である「ボム」は使い切りの割に固定ダメージなので深層の敵にはあまり意味がない。強いのはスリープボムを投げて殴るくらいだが、それは結局ロボットの攻撃力に依存している。効果範囲に状態異常床を設置する「スモーク」も活用にはロボットが影響を受けないための工夫が必要。特攻武器は普通に強いものの、手に入るかどうかは運任せなので安定はしない。「MOD」も吸収やWクローなどの有用なものとそうでないものとの差が激しい。

では深層になるにつれてどんどん強力になっていく敵とどう渡り合うのかと言うと、レベルアップによるスキル取得が主になる。本作ではレベルアップの際にパッシブスキルまたはアクティブスキルが原則2つ提示され、そのうち1つを選んで取得できる。これが敵が多くレベルアップしやすい環境と相まってなかなか楽しく、次から次にランダムなスキルを得られるのにはスクラッチくじを開いていくようなワクワク感がある。

得られるスキルも強力なものが多い。レア度が最大の5になると罠とスモークを常時無効化する「浮遊体」や所有アイテムに応じたステータスアップを得られる「キャラメイク」、どんなアイテムも確率で消費しなくなる「ワンモアエブリワン」など反則的なスキルが目白押し。計画的にスキルを取っていけばストーリーダンジョンなら無双が約束されている。中にはアイテムをロボットのステータスに変換する「デバステーター」などの尖ったスキルもあって面白い。

また使わないスキルは一定数を事前に抽選から除外することができる。レア度1のスキルは弱いので「ショット」以外は全て抽選除外するのがよい。

基本的にロボットの強化はレベルアップ時のスキル獲得で行われ、ローグライクの常によりダンジョンから出るとそのスキルはレベルとともにリセットされるので、通常のローグライクよりも気軽にロボットの強化ができる。上述のとおり装備を育成する要素はないので、何時間もかけて育成した「秘剣カブラステギ」を弾かれてロストするような悲しみとも無縁だ。なんというカジュアルさ!

最大まで強化したロボットは平時でも6、7桁のダメージを量産するキリングマシーンと化す。同時に敵から受けるダメージも常に1桁に抑えられ、さながら歩く要塞。無限回廊では鍛えに鍛えたロボットでバッタバッタと敵をなぎ倒す、爽快でテンポの良いゲームとなる。あれ? 似たようなローグライクをどこかでプレイした気が……。

チョコボライクゲーム

本作を2回目に起動したとき、ロボットに重なるチョコボを幻視した。そのくらい本作は「チョコボの不思議なダンジョン」に似ている。

一番のポイントはビジュアル。メッセージウィンドウを廃した直接的な画面とキャラに重なって表示されるダメージ数値はチョコボで既に表現されていたものである。もっとも、本作ではメッセージの省略はチョコボよりもさらに徹底されている。ロボットの二頭身かつ前傾姿勢な姿や、自身では一言も喋らず身振り手振りでコミュニケーションを図るのも実にチョコボらしい。

ゲーム面から見ても、バッシブスキルを獲得したりテラリウム素材を作ることでロボットの基礎ステータスが上がっていくのはチョコボ2のハネシステムのよう。それでいてチョコボ2ほど面倒な手順は必要ない。大方マゾゲーと評される先発のローグライクに比べてチョコボは取っつきやすく作られているが、本作もその系譜に連なるものとして位置づけられるだろう。自身を敵より強く鍛えて無双しながら1,000階より先にある無限の最下層を目指すのも、チョコボ1の第3ダンジョンを想起させる。

youtu.be

中学生の時に9999階を目指して挫折しました。欲望が深すぎる。

 

2.総評

本作は死んでも失うものが無いという点やロボットの強化のしやすさと気軽さにより、今までにないカジュアルな仕上がりを見せる。指摘できる点はいくつかあるが、ゲーム内時間で45時間ほどはプレイしているし手持ち無沙汰になったら自然と起動するくらいには面白い。

本作は要素が少なく本当にカジュアルなので今からローグライクを始めようという人にはうってつけ。逆に、カジュアルに徹しているため長年ローグライクをプレイし続けている玄人にとっては物足りなさが目立つか。総じてローグライクとしては初心者向けと言える。

 

3.攻略

汚染源

ゲーム中盤で探索することになる「汚染源」では急に敵が強くなるため行き詰まる人も多いと聞く。初めてボスも出てくるのでその対策も必要。

8階から出てくる敵の「うしⅡ」がタフで攻撃力が高い。対策はロボットのロールに「ガッツ」を入れて「吸収」のスキルを取ること。吸収によるHP回復量がダメージを上回るまで重ねがけすればタイマンで殴り負けることはなくなる。あとは8階を過ぎたらフロアを巡回せずに15階まで即降りすれば更に安定するだろう。このあたりの調整はローグライクらしい。

ボス戦ではアイテムの「POT」が活躍する。どのPOTも有効だが、特に「エンペラーPOT」と「リジェネPOT」が強い。エンペラーPOTはアクティブスキルのクールタイムを無視できる効果。エンペラーPOTを使ってから必中かつ100%クリティカルの「ブルズアイ」を連発すればダメージ効率は最大になる。「リジェネPOT」は自然回復の強化。どちらも最大限に汚染されているとより強力になる。汚染されたPOTを使うとENの消費量も増えるが、短期決戦なので気にしなくて良い。

無限廃墟

無限廃墟での死因は、うっかり「トゲロボ」を殴って反射ダメージを食らうか、敵の大火力攻撃を受けて一撃で沈むかの二通り。特に前者は20階くらいから発生しうるので対策が必要になる。対策と言っても「トゲロボを殴らないように気をつける」だと愚策もいいところなので、トゲロボを含めたすべての敵を「ビットくん」で間接的に倒す「鎧袖一触作戦」を採用した。なお、トゲロボの反射ダメージはアップデートパッチ1.0.2で「ダメージを受ける側の最大HPの半分が上限値となる」ように調整されたので現在は必須ではないが、鎧袖一触作戦はとにかく快適なので引き続きオススメ。

鎧袖一触作戦に使うロールはショルダー、リサイカー、スカウトの3つ。レベルアップで狙うスキルは以下の通り。

●ビットくん:トゲロボ対策の基幹スキル。これで与えるダメージは反射されない。ダメージ倍率やクリティカルも乗るのでレベル99時のダメージは1500近くになる。ビットくんが発生した状態で敵を引き連れて歩けば敵が勝手にビットくんに突っ込んで自滅してくれて便利。

●リュック拡張:冒険を長続きさせるための基礎スキル。

●キャラメイク:MODを2つ持てばクリティカル率が100%になる。そのほか諸々の強化も強い。

●アイテムを力に:所持アイテム1つにつき1%のダメージボーナスを得る。重ねがけ可能。最大値は360%。

●アイテムを盾に:所持アイテム1つにつき1%のダメージカットを得る。重ねがけ可能。最大値は95%。

●浮遊体:罠とスモークを無効化できる。

●デバステーター:拾うアイテムを種類に応じてHP、攻撃力、防御力上昇に変換する。ステータスアップ系のPOTは変換せず普通に使うこと。

●スモークシーカー・ボムファインダー・ハッピースロット:デバステーターの素材となるアイテムの確保。


盤石と思われる体制を整えても、200階を越えるあたりで敵のインフレに追いつけなくなる。本気で深層を目指すなら何時間もかけて徹底的にロボットを鍛えるしか無いのだろう。1,000階を越えて潜ってる人はすごい。